アソビのタネ

子どもがいるならどこでも「もっと楽しく」「もっとのびのびと」「もっと安心して」いられる現場づくりでの実践を記していきます。

子育て支援スキルアップ研修を開きましたin気仙沼

2017年11月13日に気仙沼市のワンテン庁舎で「子育て支援スキルアップ研修」を開催しました。秋晴れで穏やかに明るい日差しの中、児童館・保育所の職員や、子どもに関わるNPO職員、子育て中の親御さん、のべ48名が参加しました。

 

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午前・午後の二部構成で、午前は児童健全育成推進財団の阿南健太郎さんをお招きして講演会、午後は当団体の神林がプレイワークの研修を行いました。

【午前:子どもの育ちを支援する専門職の存在】

阿南さんがマイクを持つと、会場の空気がやわらかくなります。

はじめに阿南さんは

「まずは周りの3人の方とコミュニケーションをとってください」

と言いました。目が合ったらハイタッチやお辞儀、握手、会場に笑い声が響きました。

 

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子どもと大人ではなく、まずは“人と人”がコミュニケーションをとるって、どういうことなんだろう?何かが繋がるってどんな瞬間なんだろう?

マニュアル化した笑顔で子どもと関わるのは違う。子どもは大人の行動・人間性・雰囲気、そのままの大人を見てくる。

 

そんなお話からスタートしました。

 

写真を使ったワークでは、日常の子どもの情景を考えました。子どもは日常でいろんなことが起こります。家では見せない姿を子どもは私たちの前で見せているかもしれません。

その子が何を考えているのだろう?と考えるのが私たちの仕事の価値だと阿南さんは仰りました

 

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地域と家庭の繋がりが希薄になっている現在、子育て支援は充実してきましたが、子どもの環境の困難さは増しています。「切れ目のない支援」が子どもには必要と言われますが、現状はどうでしょうか。

 

就学前・就学後・中学校・高校の段階、家庭の事情で学童をやめた子が居場所を求めて児童館に行くようになった場合の連携ができているかなど、様々な切れ目が見えてきます。

「この会場にも“切れ目”はあるかもしれないですね」

と言われ、ドキっとした方もいたかもしれません。

 

子どもが虐待されたり、学校に行かなくなったり、気になる子どもは支援の手が入りやすいです。しかし、私たちが注意すべきなのは「今、課題がない子」だと阿南さんは言います。

今課題がなくても、明日課題が生まれて転落するかもしれないからです。

たしかに仕事で子どもに関わると、気になる子どもに目が行きがちで、スタッフ間の話も気になる子どもの話に偏ることが多いかもしれません。

 

このことは、子どもの権利条約に含まれている、well-beingの考え方に繋がっていると思いました。well-beingの意味として「困っている人に支援するのではなく、すべての人が、よりよくなるように支援する」と言われても分かりにくいかもしれません。しかし、「課題のない子」も見つめてみよう、というのは日々現場に立っている職員が意識すれば、すぐ実践できるのではないかと思います。

 

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子育て支援の制度は充実してきていますが、「人を救うのは制度ではない、人です」と阿南さんは強く言いました。児童館や保育所のスタッフは、子どもの環境の一部として大きな位置にあるのですが、その価値を自覚している人は少ないかもしれません。

 

ただ子どもと遊ぶ人、世話する人ではなく、子どもへ向けるまなざしや日々の関わりは、「その子どもに影響を与える環境のひとつ」です。その専門性を自覚する必要があると思いました。

 

かける言葉、提供しているサービスなど、子ども時代の影響はその人の一生に関わります。子どもに姿を見られているからこそ関わる大人は、自分がどうあるべきか、自分に問うて自分を高めるのが大事なのだそうです。

 

阿南さんは会場に問いかけました。

「あなたは幸せですか?」

 

 

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幸せでない大人は子どもに幸せを与えることはできません。

子どもと共に育つことができるのが、私たちの仕事の魅力でもある。

子どもにとっていい影響のある大人で居たいと願い続けてほしい。

 

そんな言葉で午前は締めくくられました。

仕事というより、人生観など“本当の豊かさ”を改めて考えさせられる講演でした。

 

【午後:プレイワーク「子どもの遊ぶ世界を感じる」】
午後は当団体事務局長の神林がプレイワーク研修を行いました。昨年も12月に子育て支援関係者を対象にプレイワーク研修を行いました。今日参加した方で、昨年も来てくれた方もいました。

 

昨年の研修の様子↓

playworkers.hateblo.jp

 

今回は、昨年2月に受けたイギリス研修写真も合わせて、新しい内容の研修を行いました。

壊れたマネキンや廃車が置かれたイギリスの遊び場の写真、見知らぬ人同士が遊ぶ広場の卓球台の写真、狩った動物の頭が隣にある子どもの日常の写真。

 

同じ子どもでも、置かれている状況や過ごす環境がまったく違うので、会場がどよめいていました。しかし、神林が事例やデータで伝える劣悪な子どもの環境は、外国の話ではなく自分たちの町の話です。

 

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子どもにとって遊ぶことは生きること、と私たちは考えています。でも参加者は“遊び”をどう捉えているのでしょうか?

「子どもの遊びを食べ物に例えると?」という質問では各グループで様々な答えが飛び出しました。

 

お菓子!好きなのを選べる。

バナナ!お腹いっぱいに溜まってエネルギーになる。

3個中1個はずれのあるガム!喧嘩するかもしれないし、楽しいかも、どきどき。

わたぱち!いつはじけるか分からない。

お寿司!おいしいけど、ちょっとワサビがききすぎる時もある。

豚汁!あったかいし、栄養がいいし、眠くなる。

 

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遊びってドキドキわくわく、あったかくて満足する、そんなイメージを共有した後、今の子どもの状況を振り返ってみました。ゲームやお金のかかる遊び、消費型玩具があふれる世の中。子どもはお金がかからず豊かに遊べるはずなのに、なぜかお金で遊びを買っていることが多いようです。

 

遊ぶ権利は「子どもの権利条約」で定められ、子どもが生まれながらに持つ権利です。

子どもの権利条約に定められている4つの柱(生きる権利、守られる権利、育つ権利、参加する権利)と、子どもに悪い影響をもたらしている社会の動向を共有したあと、子どもの権利のエピソードをもとにしたディスカッションを行いました。

 

午後の後半に入ると、聞くだけではだんだん疲れてくるので、体を動かすワークも多く入れました。

 

お絵かきワーク。人によっては、絵を描いて発表することに苦手意識を持つ方も多いと思います。大人がプログラムを組む時、子どもによっては「やりたくないなぁ」「苦手だなぁ」と思うことがあります。その状態で参加させ、嫌な気分になるのは”空間のいじめ”とも言えます。そのため、大人はプログラムを組む場合に、子どもを主体にする工夫と配慮をしなければいけません。

 

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子どもは遊ぶ力があります。プログラムを作ること、消費型玩具を与えること、大人は与えているようで奪っていることもあるかもしれません。

 

遊びの支援ワーク。遊ぶ役と、遊びを邪魔する役になって遊んでみました。

 

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数分遊んでみると…

遊ぶ役「煩わしい!」「自分の好きにしたいのに!」

邪魔する役「あなたのためを想ってアドバイスしたのに」「こうした方がキレイな絵になると思って言ったのに!」

 

同じようなことは、もしかしたら子どもと関わる時に起きている可能性もあります。

 

次は遊ぶ役と寄り添う役に分かれてもう一度。

遊ぶ役は同じように遊びますが、寄り添う役は今度は遊びを見守ります。

 

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「やったーーーーーー!!」

ワークショップのはずが、本気の喜びの声が上がりました。

先ほどは邪魔されて積めなかったペンタワー。

 

“寄り添う”というのは難しい言葉ですが、子どもは本来遊ぶ力を持っているので、その子の主体性を邪魔しないことが重要なようです。

 

【研修を終えて】

私たちの研修は、子どもの遊びの感覚を思い出したり、体験したりするワークがたくさんあります。座って資料を見ているだけでは、子どもの感覚を理解することは難しいので、ワークを通してその感覚を伝えたいと思っています。

 

参加者の1人は、「子どもの時の感覚って意外と忘れていました。けど、思い出せたことで、その感覚が自分の中にあったことが分かってよかった」という声が聞かれました。

 

子どもの感覚を持って子どもの側に立つ仲間が増えることはとても嬉しいことです。

その感覚を知りたい!プレーワーカーズの研修を受けてみたい!方はぜひお気軽にご相談ください。
→ info@playworkers.org

 

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