完成しない遊具づくり
2017年10月16日~10月21日
岩手県野田村にある障がい児デイサービス施設「ピーターズキッズ」での遊具づくりプロジェクト第2弾が行われました。
この6日間の工期を持って、完成させるものは!!
柱と山のみ。
実は、順調に作業が進んだため、4日目にはほぼ完成していました。
しかし、子どもから出た言葉は、
「いつ完成するの?」
「何ができるの??」
でした。
今回のブログでは、そもそも何を作ったのか、どんな意図でこんなデザインになったのかについて、書こうと思っています。
そして、次回のブログでは、作業工程中に起きた出来事を元に、「みんなでつくる園庭」というテーマで書いてみたいと思っています。
●初回案「ハックの」
複合型のすべり台を作った後の子どもたちの動きの様子や遊び方を見て、当初は「ドーム型のハンモック」や「つり橋」、「車いすでも遊びやすいもの」があると良いなと言われていました。しかし、それをそのまま作ってしまうと遊び方、遊ぶ子どもが固定されてしまうと思いました。
そこで、提案したのが、「林」の様な環境です。
決まった形の遊具ではなく、自然環境を生み出したいと考えました。
自然を生み出すなんて、神しかできませんから、人工物らしくない偶然性が必要でした。
「ココは、つり橋ゾーンです。」なんていう意図が伝わらないほうがいい。
で、考えたのがこの形です。
真上から見ると「ハックの」になっていますね。(NPO法人ハックの家運営の施設のため)
ふざけているようにしか見えませんね。
でも、柱がたくさんあるだけで、遊びが大きく展開していきます。
今回のプロジェクトを前にそのおもしろさだけでも分かってもらおうと、デモンストレーションをしていました。
●ロープ遊具の発展性
写真は、昨年作ったすべり台の柱を利用して遊んだ様子です。
「ロープが遊び道具になるなんて思いつきもしなかった。」By施設長
色々な遊び方ができるのがロープ遊具のおもしろさです。
●小屋づくり、基地づくり
夏の長期休みを利用して遊びに行ったときには、廃材を使って、小屋?基地?のようなものを作りました。
この時は、土台になる部分を僕たちが作り始めましたが、柱となる木がたくさんあって、材料と工具さえあれば、子どもたちが自由に作っていくと思います。
立派な秘密基地ができあがるかもしれませんし、大人の目からは理解できないカタチで終わるかもしれません。
でも、結果何ができるかではなく、子どもたちが自由に作り変えができるというところにおもしろさがあると思っています。
●デザインの変更
このように、柱に加え、ロープや廃材など、子どもや職員が自由に使える道具があるだけでも十分におもしろくなると僕らは信じているので、そんな環境だけを一緒に作れたらいいなと思い、提案をしていました。
その後、打ち合わせを進める中で、活発に動き回れる子どもだけではなくて、普段は室内からほとんど出ない子が外に興味を持つ何かはないかというお願いを受けました。
●外に近づく工夫
おもしろさを伝える時に
「さぁ!外で遊ぼう!」「コレ、おもしろいよ!」
という言葉のサジェストで乗ってくる子もいますが、
おもしろそうな光景に出会うこともその子の「やってみたい」を引き出すことにつながります。
室内から望む光景の中に「おもしろそうだな」と思う瞬間があれば、行ってみたくなるものです。
僕らは、そこまでの動線を近づける工夫をしました。
●室内からウッドデッキ、そして地面、山へと続く
今、外で遊ぶには、玄関で靴を履き、ぐるりと回って園庭にでなければなりません。
なので、室内から園庭が見えるとはいえ、ちょっと距離が遠いなと感じます。
「おもしろそう!やってみたい!!」
は、ぐるりの間に落ち着いてしまっているかもしれません。
そこで、室内から外に直結できるように、ウッドデッキを作ることにしました。
そうすれば、少々歩くのが大変だって、コロコロと外に出やすくなるかもしれない。
そうして、ウッドデッキに出て、外をのんびり眺めていると、元気に走り回れる子どもたちがロープや柱、すべり台などを使って遊んでいます。
今よりその様子が近くで見られるようになったら、「おもしろそうだな。混ざりたいな」と思うのではないか。そんな風に想像しました。
さらに言うと、ウッドデッキは、スロープになっていて、そのまま外に直結していれば、心の動くままに外に飛び出していくこともできると考えました。
●築山という名の土の山
ウッドデッキ、スロープを経て、外に出ると、土の山があります。
普通、「築山」というと、しっかりと地固めされ、土管が中に入っていたり、キレイに養生した芝生が植えてあったりするのを想像するかもしれません。
でも、そういうのは、嫌でした。
目指すのは、園庭の起伏。
歩く練習やちょっと高いところに立つ練習。そんなことも、運動機能の発達、改善には必要だったりします。
しかし、急に、幅の狭い平均台を用意されても、怖いし、おもしろくもありません。
だったら、そもそも地面が平らでなかったらいいのでは?
そう考えました。
はじめは、築山のように高い山にしますが、それも、子どもたちが移動させたり、掘ったり、盛ったりする中で、環境が変化していくといいと思っています。
まさに、タイトルの通り完成しない遊具づくりの一例です。
●完成イメージ
このような提案や打ち合わせを繰り返し、イメージを共有するためにラフ図を作成しました。
●そして、10月の第1工程でできたものは
遠くから見れば見るほど、いつ完成なんだろう?と不思議に思う光景ですね。
10月の工程では、ひとまずこれで完成です。
きっとこれから遊び込んでいくうちにもっともっと面白くなっていくでしょう。