アソビのタネ

子どもがいるならどこでも「もっと楽しく」「もっとのびのびと」「もっと安心して」いられる現場づくりでの実践を記していきます。

「2つの再会」

 

【イベントの企画】

4月24日、LAZO倶楽部から、河川敷を自分たちだけで掃除するのは「すごく大変、一緒に協力してくれる人を集めなきゃ」という声にもとづき、次回は、近所の人たちや小学生にもイベントとして広報して、清掃と遊び場をしてみようと話し合いました。

 

LAZO倶楽部は新しいメンバーの獲得、大人は協力者があらわれることと地域への活動の周知を目指し、『遊び場&お掃除』イベントをしようということに決まりました。日程は5月22日です。

 

内容は、ダンボールなどで手作りする小さな子も楽しめるおもちゃと、プレーカーでの遊び場と、出来たら焚き火もしたいね、と計画しました。

 

広報に関しては、チラシを2種類つくることにしました。ひとつは、地域の大人に向けて、大人(『子どものための石巻市民会議』と『プレーワーカーズ』)がつくるチラシ。もうひとつは、子どもたち(LAZO倶楽部)が子どもたちに向けてつくるチラシです。

 

河川敷の使用許可と、焚き火が出来るのかどうかは大人が市役所に確認してみる、ということでこの日は解散となりました。

 

どんなイベントでも開催しようとするとさまざまな準備があります。

当日の流れを考え、関係各所との連絡調整、広報媒体の作成と配布などです。イベントの開催が一ヶ月後ならば、規模にもよるが、準備の期間としては長くはない。けれどいくらか余裕をもってのぞむことができる。ゆえに、大人としては安心感がありました。

 

 

そして、計画はくずれるものです。

 

 

【崩れたのは計画か、気持ちか】

2日後、LAZO倶楽部から「5月22日は部活の大会と重なったので、5月1日に話し合いをして、8日にイベントをしましょう」という内容のメールが届いたのです。

無茶言うなよ!延期するならまだしも、短縮だと…とスマートフォンを持つ手が震えました。

5日後に話し合い、その一週間後にイベント開催となると、期間は2週間ありません。ゴールデンウィークがその間に挟まっているので、行政との連絡、小学校へのチラシの配布その他広報を考えると当初あった余裕はなくなってしまうからです。

 

 

しかし、LAZO倶楽部は焦りを感じている様子はありません。その現状把握の違いに恐ろしいものを感じました。

ここはいったん、よくネタにされている『ジャネーの法則』を当てはめて、騒いだ気持ちを落ち着かせることにしました。

 

ジャネーの法則とは、大人と子どもの主観的時間感覚の違いを心理学的に説明した用語です。

その法則によると、50歳の人にとっての一日の長さはは、1歳の赤ん坊が感じる一日の長さの50分の1であると説明されます。

5月22日がイベントだった場合の準備期間は26日間。5月8日がイベントだった場合の準備期間は12日間。ジャネーの法則の計算に従うと、29歳のぼくの12日間は、13歳のLAZO倶楽部メンバーにとってはおよそ26.7日間。なるほど、それならばLAZO倶楽部からの準備期間短縮にもうなづける…と強引に解釈しました。

 

もちろん、こんな法則を引っ張り出したところで、事態は変わりません。それでも、自分の焦りは杞憂かもしれないし、自分の余裕のなさは感覚からでしかないかもしれない。当日まで、できる限りのことをすることに決めました。

 

 

【準備】

さて、5月1日、チラシと公園使用許可申請書類をそろえ、水明町民会館でLAZO倶楽部と子どものための石巻市民会議とプレーワーカーズで話し合いと準備を行いました。

 

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LAZO倶楽部はダンボールを材料に、『触覚なぞなぞボックス』や『簡易版イライラ磁石』、『降三世明王お面』と呼べそうなオモチャを作り上げていました。小学生が楽しめるものを、ということで作っているのだそうです。

 

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午後からは、チラシをどこに配るか相談をしました。

LAZO倶楽部のメンバーいわく、「開北小学校にチラシもらってくれそうな先生がいる」そうで、彼女たちに連れられ、その母校、開北小学校行くことになりました。

 

 

【母校、再会】

LAZO倶楽部のメンバーたちは、せかせかと急き立てるように、開北小学校への道を案内します。のんびりと歩いていたら「はやく!」と怒られるくらいです。久しぶりの小学校に、気が高ぶっている様子に見えました。校門横の門をなれた手つきで開き、どんどんどんと、職員室めがけて歩いていきます。

この日は日曜日でしたが、LAZO倶楽部の目当ての先生であるシブヤ先生、それに教頭先生もいました。普段は自由奔放な姿を見せるLAZO倶楽部のメンバーは、母校での先生との対面にあわせ、急に落ち着いた雰囲気となり、少し緊張した表情を浮かべながら、「中学でも元気にしている」ことを伝えていました。先生も、安心した嬉しそうな様子で頬を緩ませていました。

 

小学生から中学生になる。その飛躍、精神的な変化は大きなものです。中学生になったときに、毎日通っていたはずの小学校が、小さく見えてしまったような感覚を味わった人は大勢いるのではないかと思います。

 

LAZO倶楽部のメンバーは、1ヶ月ほど前に卒業したばかりとはいえ、母校に行き、そして仲のよかった先生と再会し、どんな気持ちを抱いたのでしょうか。

 

 

そして、ここではもうひとつ再会の場面がありました。

 

二人の先生に、チラシを開北小学校へ置いてもらうお願いをしたら、快く受け取ってくれることになり、あわせてプレーワーカーズの説明もしました。

すると、シブヤ先生が『あそぼっかー(プレーカー)』のことを知っていたので驚きました。

震災後の2011年、開北小学校に遊び場を届けにきたぶんちゃ(代表理事須永)の乗るあそぼっかーのことを覚えてくれていたからです。ぶんちゃとシブヤ先生が、お互いに大変でしたね、と当時を振り返りながらも、今でも「子どもの遊ぶ環境」は十分ではない実情を共有していました。

 

 

一ヶ月でも変わっていく「子ども」と、5年経っても改善の乏しい「遊ぶ環境」。子どもと遊ぶ環境は不可分なものであるのに、一方の変化に、一方が追いつけない。今を生きる子どもたちの、過ぎ去っていく「子ども時代」に、「遊ぶ」ことを考える大人たちはどれだけ応えていくことができるのか。2つのこの再会が、皮肉にも「遊ぶ環境」の現実を映し出しているような気がしました。

 

 

 

 

水明町民会館へ戻った後は、『子どもセンターらいつ』へのチラシ配達、途中になっていたおもちゃづくりを再開。わいわいがやがやとその日の準備が終わり、来週8日のイベントは晴れることを期待しながら解散しました。

 

次回ブログは、LAZO倶楽部企画、河川敷での「遊び場&お掃除」の様子をご紹介します。