アソビのタネ

子どもがいるならどこでも「もっと楽しく」「もっとのびのびと」「もっと安心して」いられる現場づくりでの実践を記していきます。

未来の保育士に向けて ~盛岡大学 講義~

 盛岡大学で2年生約150名を対象に、当団体の神林(事務局長)と遠藤(プレイワーカー)が講義を行いました。今日参加したほとんどは、保育士など子どもに関わる仕事を目指している学生でした。

 

依頼してくださった大学の先生は、子どもの自由な遊びや冒険遊び場に関心がある方でした。学生や保育士自身が子ども時代十分に遊んできていない場合、子どもと関わる時に大切にすべき“遊び”が分からなくなる状況を、先生は危惧していました。

 

イベントやプログラムが子どもの遊びだというイメージになりがちですが、やりたくない子を無理に参加させる遊びは、その子にとっては遊びにはならないはずです。子どもが「やりたい!」と思ってやっていることはすべて遊びになりえます。それは、一人で土をいじる遊びだったり、大声をあげる遊びだったり、大人にとって不思議で難解な場合もあるので、きっと子どもと接する時に迷うこともあると思います。

 

学生からとった事前アンケートでも「子どもとの遊び方を教えてほしい」という要望が多くありました。私たちは子どもと遊ぶメニューをではなく、“遊び”の根幹に関わることを伝えました。

 

今回の講義では、遊び場で関わった子どものエピソードを通して「子どもにとって遊びとはどんな意味があるのか」「遊び場を運営する地域の大人やプレイワーカー(子どもの遊びに関わる専門の大人)がどんな役割を持っているのか」を神林が伝えました。また、子どもの遊び場に関わって2年目ということで、遠藤は「遊び場に関わろうと思ったきっかけ」をお話ししました。

 

 

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講義中、スライドには自作の釘ナイフをつくる小学生や、焚き火をする3歳児、大きな秘密基地をつくる子どもたちが映しだされ、写真が変わるたびに学生から驚きの声が上がりました。神林はそれぞれの子どもとのエピソードを説明した後、「子どもとの遊び方を教えてほしい」という要望に対して、「子どもがやりたいことをできるように、一緒に考えている」と答えました。 釘ナイフをつくるプログラムを組んだわけでも、3歳児に焚き火の仕方、子どもたちに秘密基地の作り方を教えたわけでもありません。ただ、子どもから出た「やりたい!」の声にできる限り寄り添って、遊び場で過ごしてきたことを伝えました。

 

そして遊び場では子どもの抱える悩みや生きづらさと直面することも伝えました。東日本大震災直後の遊び場では、子どもが心に負った傷を遊びであらわし、自ら整理していく姿が見られました。

 

当時、泥遊びでダムづくりをしている男の子が、ある時ボソリと「おれの家は流されたんだ、こんなふうに」と言ってドロ水に草を浮かべました。その時プレイワーカーとして遊び場にいた神林は、ドキッとしながら見守りました。子どもたちはひとしきり遊んでダムの水を流しました。その時、その男の子は木の枝を地面に挿して「家を建ててるんだ~」と言ったそうです。子どもは遊びの中で起きた事象を整理し、それを乗り越えようとしていました。子どもの遊びには心を癒す力があります。

 

だからこそ神林は

「遊びは単なるレクリエーションやイベントではありません。“食う・寝る・遊ぶ”と言うように、生きるために必要なものです。みなさんは、その子の一生に関わる子ども時代を共に過ごす、重要な仕事をするんですよ。」

と未来の保育士・子どもと関わる大人へメッセージを伝えました。

 

 

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遠藤からは年齢的にも学生に近いため、子どもと関わるようになった2年前のエピソードを伝えました。

初めてプレイワーカーの居る遊び場に関わったのは、大学卒業後に勤めた仕事を辞めて悩んでいた時期でした。当時知り合ったばかりのプレイワーカーから、「子どもが使う遊び場の倉庫を作るのを手伝って欲しい」と声をかけられたのが始まりです。どうやら、仕事を辞めて悩んでいるのを知って誘ってくれたようでした。それは居場所がなかった当時の遠藤には衝撃的なことでした。

親・先生・後輩とは違う、上でも下でもないナナメの関係の良さを実感した時でした。自分と近しい人には相談しにくく、遠い人には言ってもしょうがない相談。そんな話ができるナナメの関係を持てずに、一人で思う悩む人が多い今、プレイワーカーと出会えたことは幸運だったと思います。遊び場では、子どもはナナメの関係である地域の大人に接し、さまざまな生き方の大人に出会うことができます。それは生きていくなかで大きな支えになる時があります。

 

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↑倉庫制作中(当時の写真)

遠藤が当時もうひとつ衝撃を受けたことがあります。その遊び場のプレーワーカーの子どもへのまなざしでした。カードを投げていた男の子がいたのですが、ただ散らかしているようにしか見えませんでした。しかしその時プレーワーカーは、「なんだかイライラしていたみたいだ。なにかあったのかな?」と呟いたのです。

その行動を責めるのではなく、行動の背景にある気持ちを想像する。その時初めて遠藤はプレーワークの奥深さに触れたと思います。その魅力から仕事とすることを決めました。

 

遠藤の話は、これから進路を決める学生たちにとって何かヒントになれば幸いです。

★ この遠藤のエピソードは、当団体HP「ボランティア・インターン募集」に詳しく掲載されています。

playworkers.org

 

講義の後は、キャンパスの玄関前でプレーカーの展示を行いました。講議を受けた学生だけでなく、通りかかって興味を持って立ち寄る学生もいました。

「かわいい!」

「こんな自由な遊び場、子どもの時に欲しかったです。」

「私も講義を聞きたかった」

そんな声が聞かれました。

 

 

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講義を聞いていた学生は、ばかばかしい子どもの遊びの写真に笑ったり、遊びの効果を真剣に聞いてメモをとったり、時に泣きそうになったり。それぞれでメッセージを受け取ってくれた様子でした。本当に泣いていた学生もいたそうです。自分の子どもの時の記憶に何か引っかかったのか、今生きている子どもにもつらい状況があることに衝撃をうけたのか、原因は分かりません。

 

今日出会った学生が将来子どもと関わる時、今日の講義が活かされていくことを期待します。

 

文責:遠藤みゆ

 

 

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