静岡県「NPO法人ゆめ・まち・ねっと」視察・研修
2017年4月5日~4月8日の4日間、当団体の神林・廣川・塩田・遠藤の4名が静岡県富士市にあるNPO法人ゆめ・まち・ねっとで視察・研修を行いました。
【なぜ静岡へ・・・?】
プレーワーカーズでは今年度、一軒家を借りて子どもの居場所づくりの事業を始めます。これまで当団体は、プレーカーによる移動型の遊び場を開いてきました。しかし、いじめ・引きこもり・不登校といった生きづらさを抱える子どもに出会うなか、定点で子どもと関わり、その姿や浮かび上がる社会の問題を大人へ発信することが必要だと考えました。
そんな私たちの拠点事業のモデルとなっているのが静岡県富士市で活動している“NPO法人ゆめ・まち・ねっと”の「おもしろ荘」です。
【“NPO法人ゆめ・まち・ねっと”とは?】
NPO法人ゆめ・まち・ねっとは、子どもの遊び場や若者の居場所づくりの活動を始めて13年目を迎える団体です。子どもが放課後に立ち寄って駄菓子を食べたりマンガを読んだり自由に過ごせる「おもしろ荘」、そのおもしろ荘でお金の有無関係なく皆でご飯を食べる「こども食堂」、子どもが外で自由に遊べる「冒険遊び場たごっこパーク」、大人の学び場「子育て勉強会ワンコインゼミ」など、ご夫婦2人で多くの事業を運営しています。
「たっちゃん」「みっきぃ」の愛称で呼ばれる2人にお話を伺うと、どの事業も出会った子どもに合わせて生み出されたものでした。
【1日目 おもしろ荘】
おもしろ荘に私たちが到着した時、一番に耳に飛び込んできたのは、カードゲームの歓声と、ホラー映像の「お分かりいただけただろうか…」のナレーションでした。一体どんな部屋なのだろうと覗いてみると、ボードゲームとマンガ本と駄菓子がひしめく、小さな一室。見上げると、子どもが作ったプラモデルが何体も宙づりになって、その周りに活動写真が貼り巡らされていました。老舗のラーメン屋のような、使い込まれて落ち着く、そんな雰囲気の空間です。
部屋に入ると、自動的に人の輪の中に入るような距離感。カードゲームで遊んでいた子ども達が、研修初日で少しそわそわしている私たちを誘ってくれました。どこから来たのかも、名前も、年齢も、何も聞かれず進んでいくゲーム。ルールが変わったり、順番がおかしくなったりしても、みんなが笑い飛ばすなら、それもアリ。
学校や家庭とは違って枠組みのない空間は、子どもに沿って変化していくような気がしました。だから枠組みに収まりにくい子どもにとっても、居心地良い場所になるのだと思います。
【2日目 0円こども食堂】
おもしろ荘で週に1回開かれる子ども食堂。この日は食材の調達から始まりました。活動に賛同する企業・フードバンク・直売店から食材を譲り受けるために、車で各所をまわります。受け取った量によって保護シェルターや児童養護施設に配ることもあるそうです。
こうして集まった食材を料理するのは、みっきぃとボランティアたち。この日は料理店を営むボランティアが担当で、アンコウ汁とお惣菜、丁寧に仕込んで焼いたアユが次々と盛り付けられます。主食はみっきぃ直伝、天かすとだし汁を和えたホクホクのご飯。デザートは焼きバナナとイチゴ、ボランティアの女性が作ってきたミカンの砂糖漬け、ホイップを添えて豪華な一皿。
「今日は豪華だねぇ」
なんて言いながら盛り付けます。
キッチンの隣の部屋では、子どもたちが遊んでいます。
「食べる人は?」
とみっきぃが尋ねると、意外にも「わたしいらなーい」という子が多かったです。
子ども食堂目当てではなく、ただ遊んでゆっくりしたい。放課後の暗くなるまでのわずかな時間ですが、その子たちにとっては大事な時間なのでしょう。
【3日目 子育て勉強会ワンコインゼミ】
季節・時事に合わせたテーマや講演会後の報告など、お題を変えて行う“子育て勉強会ワンコインゼミ”に参加しました。テーマは「五月病」。入園・入学で大きく環境の変わる春、新しい環境に慣れた頃なぜだか気力がわかない…そんな5月を迎える前にとのことで選ばれたテーマでした。
児童精神科医の田中康雄先生の『支援から共生への道』という本の一部を読み合わせしながら、それぞれの体験をもとに内容を深めて理解していきます。一人でこの本を読んだとしたら、ほとんどの内容が頭に残らずに終わっていたでしょう。みんなで読み合わせて、たっちゃんの解説や補足があったから、自分の中に落とし込むことが出来たように思います。
また人数にも工夫があり、定員を設けることで、少人数にしています。そうすることで、発言がしやすくなり、個人的なエピソードも言いやすい雰囲気になります。
数ある研修、講演会、専門書、分かったつもりで終わるものが多いですが、勉強会を開くことで、主催者側も勉強になるのは利点です。
【4日目 冒険遊び場たごっこパーク】
朝から雨模様のたごっこパーク。たっちゃんとみっきぃが倉庫から次々と道具を出します。タープ、たき火用の半割りドラム缶、イス、看板…。
1番乗りは常連の女の子。私たちが到着した時には、2人と一緒に準備していました。水道の場所を教えてくれたり、さりげなくたき火の灰を捨てに行っていたり、動きはまさにベテランスタッフ。
たき火を囲んでおしゃべりしているうちに、また一人常連が加わり、2時間ほどずっとおしゃべり。雨が打ち付けるタープの下、たき火を囲んでゆったりとした時間が流れていました。
私たちはお昼頃に視察・研修を終え、たごっこパークを後にしましたが、その後も写真付きでメッセージが送られてきて、雨のなか何人もの常連が訪れていたようです。
【視察・研修を通して感じた、ぶれない芯】
たっちゃん・みっきぃの活動の芯は、常に出会った子ども・若者。“その子”のために何ができるか、実行するために何が必要かを考えていました。
2人のもとには集めているわけではないのに、なぜか生きづらさを抱えた子どもが集まってきます。障がいを抱えていたり、ネグレクトを受けていたり、ダブルルーツだったり。社会の中に“おもしろ荘”や“たごっこパーク”のような場所がいっぱいあれば、集まって来ないのでは?そう考えると、生きづらさを抱える子ども・若者の居場所がどれだけ少ないかを思い知らされます。
今後、私たちは宮城県名取市と気仙沼市で2つの拠点事業を始めます。たっちゃん・みっきぃに頂いた沢山の学びを生かして、子どもの居場所になれるよう、活動していきたいと思います。
文責:遠藤みゆ
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