DAY7・リスク・ベネフィットアセスメント~新型コロナによって行き場を失った子どもたちの日常を支えてきました~
こんにちは、プレーワーカーズ事務局の廣川和紀です。
これは、自分で、べっこうアメを作っているところです。
火を起こして、お玉と砂糖と水を準備し、火にかけ、
煮立って、色が変わったら、冷やして固める。
これだけの作業ですが、子どもにとっては、とても大変なことです。
まず、炭に火をつける。
いま、大人でさえ、できない人も多いでしょう。
もちろん、子どもたちも初めからできるわけではありませんが、毎日毎日挑戦しているとだんだんと上手になっていきます。
そして、あの小さなお玉に、水や砂糖を入れてこぼさずにキープする。ということだけでもとても難しいものです。
こぼしては、作り直すということを繰り返します。
もちろん、べっこうアメくらい、みんなの分まとめて、ガスコンロで作ってあげたほうが簡単です。
ただ、難しいけれど、じっくり何度もやってみるということが、子どもにとって、
遊びであり、一歩先の自分になるための挑戦でもあります。
子どもたちの遊びを見ていると、とても勇敢だなぁと感じませんか?
子どもたちは、まだやったことがない、自分にできるかどうか分からないことでも、ほとんど躊躇することなく、
「何それ!やってみたい!!」という挑戦心に溢れています。
大人になると、自分の背丈の倍くらいある壁に挑戦したいとは思わなくなってしまいますね。
このように遊んでいる様子を見てみても、子どもというのは、自分の限界よりも少し上のことに挑戦する存在なんだということが分かります。
それは、子どもがまだ成長段階にあるため、その発達に必要な挑戦を「楽しい」と思えるように本能にプログラムされているからです。
だから、子どもの遊びには危険が伴います。
例えば、一見平和そうなべっこうアメづくりも、それなりのリスクが存在しています。
煮立って、だんだんとアメ状に粘り気が出てきたときに、手の上にこぼしてしまうと、「お湯」とは違い、皮膚に留まってしまうので、やけどの程度がひどくなってしまいます。
作っている途中に飽きて、地面に放ったまま走り回って遊び、戻ってきてからまた食べるということもあります。そもそも、衛生的にどうなのかもよく分かりません。
しかし、遊びに伴う「リスク」の部分だけに着目してしまうと、子どもの成長発達に必要な「挑戦」や遊びの「楽しさ」、「ノリ」、「気軽さ」、「自由さ」などに目が行かなくなってしまいます。
ともすれば、子どもの行動は、ほとんどが、大人から見れば、危なっかしいものにも見えるので、ブログDAY6にも書いた、責任問題と相まって、禁止や制限になりがちです。
子どもの育ちを保障するためにも、遊びを見守る上で大切なことは、
リスク(遊びの危険性や危険度)とベネフィット(遊びから得られる利益)のバランスをどう保つか、です。
子どもの居場所〇〇(まるまる)は、全国一斉休校が始まる、3月2日から、平日も開放することに決めました。
この時点の宮城県においては、まだパンデミックを恐れるような状況ではなかったので、感染拡大防止の観点と、学校が休校になったことによる行き場所の不足を天秤にかけて、判断しました。
家の中にずっと閉じこもって、運動機会も減り、免疫力が下がるとしたら、それを防ぐ目的で、外遊びの場があったほうが、感染拡大のリスクよりも事業効果が高いと感じたからです。
これは、あくまでも宮城県名取市で行っている私たちの活動の現地判断であるので、他の取り組みと同様に比較することはできません。
なので、首都圏の同様の活動、あるいは県内の公共施設とは、判断基準が違うかもしれませんが、それは、室内かどうか、人数規模はどうか、不特定かどうかなど条件も違うので、一律に判断することはできないと考えています。
少なくとも、5月31日の時点では、何事も起こらなかったので、ほっとしていますが、
今後、振り返ってみて、再検討すべきこともあるかもしれません。
しかし、その都度、社会状況や専門家の提言、医学に基づく分析なども視野に入れながら、情報を取り入れながら、自分たちの考えで、自分たちの意思で、活動を中止しないという判断を続けたことは事実です。
自分たちの記録のためにも、どのような判断をしてきたのか、記しておきたいと思います。
まず、新型コロナウイルス(COVID-19)についてですが、「新型」という未知のウイルスのため、初期は、その全容が明らかになっていなかったことも、不安が大きくなるひとつの要因だったように思います。事実、不安という気持ちの問題だけでなく、症状についても、一般的には情報が不足していたため、適切な対策が考えられないということもありました。
また、どの程度の危険性があるのかもよく分からず、何よりもワクチンがないので、重症化を抑えられない、集団感染を防ぐことができない。
というのが、今回のコロナ禍におけるとても大きな「リスク」であったように思います。
しかし、このブログ連載でこれまで書いてきたように、子どもにとって、遊ぶことは単なる余暇ではなく、生きることそのものです。
学校も児童館も公園も公共施設も閉鎖され、行き場がなくなった子どもたちにとって、心と体の健康を保つということは、大きな「ベネフィット」になり得ると感じました。
3月上旬から、中旬までは、名取市内では感染者が出ておらず、長期間室内に籠るよりは、免疫力を高めていく方が、効果があるだろうと考えていました。
その後、3月25日、東京都知事から感染爆発の重大局面として、週末の不要不急の外出を避けるようにとの要請が出され、
翌日、3月26日には、名取市を含む塩釜保健所管内で、初の感染者が報告されました。
感染者数の推移を見ても右肩上がりに増えてきた時期でもあり、自身が感染しないために行動を変容させていく必要がありました。
その時点からは、県内外含め、長距離の移動を伴う仕事は延期または中止していました。〇〇(まるまる)の活動も、開催情報を公にはせず、保護者と個別に連絡が取れる範囲に縮小してきました。
それでも、閉鎖しなかったのは、「子どもは重症化する率が低い」こと「一軒家の活動は規模も小さく、風通しも良い」こと、「暖かくなり、外遊びが増えてきた」こと、などの理由から、名取市内においては、リスクが大きくはないと判断していたからです。
もちろん、子どもにとって、遊びは不要不急のものではないことも考慮しました。
4月に入り、緊急事態宣言も発令され、学校の休校も長期化し、別のリスクが浮上してきたように思います。
・人と会うこと自体が恐怖。
・知り合いの知り合いの知り合いにでも、感染者が見つかれば、自分も罹っているかもしれない、そして、まわりに感染させてしまうかもしれない。という怖さ。
・子どもが一日中家にいることでの、保護者の負担増やストレス増加。
・それに伴う、家庭内暴力や虐待などの恐れ。
・公園で遊ぶ、外を出歩くだけで、通報されるといった恐怖。
・世間の目。
などなど、経済的にも精神的にもゆとりがある家庭は、兄弟だけ、家族だけで、問題ないかもしれませんが、長期にわたる自粛(ガマン生活)に限界を感じている人も増えてくるのではないかと思っていました。
遊び場を開放することで、家族以外の人と接触することは、新型コロナウイルスの感染症の側面から見れば、リスクにもなりますが、同時にストレスの解消・緩和、心の支えといった点で、ベネフィットにもなります。
不特定多数が集まるショッピングモールのような空間よりも
特定少数で集まる遊び場・居場所の方が”三密”の観点から見ても低リスクであろうとも考えていました。
4月16日に緊急事態宣言が全国へ拡大された時期からは、
雨天時は、お休みにし、室内に密集することを避けて、開放を続けました。
この時期からは、各家庭の判断で、来なくなった子も増えてきました。
兄弟のように、毎日毎日同じ顔触れで、遊んでいました。
地域も、中学校区の中のさらにごくごく近い数家族が集っているという状況でした。
家と、〇〇(まるまる)と水路くらいにしか、行きません。
ほぼ、誰にも会いません。
会うのは、オタマジャクシとドジョウとヌマエビとザリガニくらいです。
子どもたちは、自転車で、○○に集合した後、網を持って、近くの用水路に出かけていきます。
お昼ごろまで遊んだら、〇〇に戻り、お弁当を食べて、あとは、庭で鬼ごっこなどをして遊んでいきます。
「ステイホーム」が盛んに叫ばれている時期ではありましたが、
いつもなら、たくさんの経験ができたはずのゴールデンウィークもなくなり、夏休みの期間が12日間に短縮されることが決まり、学校が再開されても行事やプールの授業がなくなることが予想され、
代わりに子どもたちに課せられたのは、宿題、課題、オンライン講義などでした。
また、自由に遊ぶ時間があったとしても、オンラインゲーム、YouTubeなど、実感を伴う体験ではなく、受動的で暇つぶしの道具ばかりでした。
たしかに、新型コロナウイルスの感染拡大は、大人にとっても未知の出来事ではありますが、子どもたちはその混乱の犠牲者でしかありません。
その子の周りの大人が向ける「子ども観」は、その子の人としての育ちに影響します。
そのリスクもまた、数値で示すことはできませんが、感染症のリスクと遜色ないほどに、いのちに影響を与えると考えています。
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遊びのリスクは、一つの側面だけでは、判断ができません。
心が折れるよりも骨が折れるほうがましだ。
これは、イギリスで冒険遊び場づくりに尽力したアレン・オブ・ハートウッド卿夫人の言葉ですが、日本の冒険遊び場づくりの中でも広く知られています。
当然、今回のコロナウイルス感染症については、骨が折れる程度ですらない。ということも理解しています。
しかし、遊びの価値を無視して、一律に大人が子どもをコントロールすることは、それもまた骨が折れる程度のものではありません。
初めにも書いたように、遊び場の開放を続けたことが、正しかったかどうかは分かりません。しかし、常に子どもたちの気持ちも考えながら、悩み続け、閉鎖の判断はしませんでした。
これから、もしかしたら、第2波、第3波が来るかもしれません。
また別のウイルスパンデミックが起こるかもしれません。
その時のためにも、今回の判断を記録に残しておこうと思いました。
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